全てを見せない漫画を見つけた。『うなぎ鬼』
少し前より、よく出てくる電子書籍の漫画のポップ。
興味が湧いちゃって、サイトに飛んで試し読みをする。大体30ページくらいしか読めない、しかもそのなかに表紙とか目次、本編が始まる前の白紙ページまで入るから、実質15〜20ページくらいしか読めない。わかっちゃいるのに見てしまって、「続きはご購入下さい」の表示を見て、一気に興味を失う。しかし初めて買ってしまった。
こいつはすごかった。
〜あらすじ〜(アマゾンより引用)
主人公、勝は裏稼業に堕ちる前は、フリーター、ギャンブルに狂い。「スマグラー」や「カイジ」など、この種のものは名作が多く、映画化もされるほど。認知度は高い。
私は直接的な表現があまり得意ではありません。血とか暴力をこれでもかと見せられると、疲れるし、正直ヒきます。どんなに面白い!深い!と言われてもベルセルクや寄生獣は絶対に読めません。いや、意味があるのであればいいんだけど、大体はいらん装飾に見えてしまうんです。
うなぎは、タンパク質であればなんでも食べる。人間はほぼ水とタンパク質でできている。タイトルにうなぎ、しかも後ろに鬼がくっついていて、裏稼業のハナシ...。これでもう、グロいシーンが勝手に頭のなかを駆け巡ってしまいます。そこに表紙の画力も相まって、もう嫌になります。
確かに生々しい暴力、残虐シーンはあります。しかしほぼありません。全体の比率で言えばドラゴンボールくらいでしょうか。
この漫画は読み手に絵を「想像」させます。それが怖いんです。
例えば、主人公、勝が社長に連れられて行く黒牟(くろむ)市。生臭い匂いが漂い、スクラップされた車が通りに捨てられていたりする工業地帯です。
そこにあるマルヨシ水産(鰻の養殖業者)の社長の手が親指しかないのですが、そこは直接手を描かず、勝の表情とセリフで見せます。
この、一番奥の肝心なところを見せない手法、個人的にとても好きです。この手法が至るところに散りばめられているのがこの漫画なのです。
上記の例で言うと、読み手それぞれの最も恐ろしい「手」を想像させるわけです。一番効果的だと思いませんか。
体だけ大きくて(推定身長190㎝、体重100キロ)気は小さい勝が次々と体験する初めてのことに怯え、そんな勝を「お前はこっち側の世界にいる素質がある」と買っている社長・千脇に心身ともに「改造」されながら、勝は裏の世界で、人として成長していきます。この二人を初め、登場人物が全員、妖しくも魅力的です。
この空気感で、是非映画化してほしいなぁ、と思います。
原作は小説のようで、これも是非読んでみたいです。